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 神の言葉を求めて


by iesukirisuto

「共産党宣言」と「現代が受けている挑戦」

 前回のブログで、「共産党宣言」を読み出したら、トインビーの「現代が受けている挑戦」を思い出したということを書いた。これは、故のないことではないと思われる。二人とも近代の人間であるし、トインビーはイギリス人であり、共産党宣言は、イギリスで出された。そして、トインビーのおじいさんは、産業革命についての有名な学者だそうである。マルクスは、資本主義の先進国イギリスで資本論を書くようになったのだが、これは産業革命と無関係ではない。マルクスは、資本主義が暴走することによって、ブルジョワ階級とプロレタリアートの階級対立が激化して、革命がおきると論じたが、これは生産の無政府状態を阻止するものになると考えていた。生産の無政府状態をプロレタリアート独裁によって、統制するというのが共産主義の考え方なのであるが、これは、トインビーの世界政府の構想と共通するところがある。共産主義も本来世界全体の革命を考えており、トインビーのいう「世界政府」のようなものをつくる必然があるとしたのである。
 マルクスはプロレタリアート独裁、世界革命を構想したのは、資本主義が、全世界の人間を奴隷化するとみたところにある。その場合、マルクスは階級ということを考えていたので、革命によって、世界政府のようなものができると考えたのである。経済活動の無政府状態をコントロールするという意味合いが、共産主義にはあると言えよう。トインビーは、経済活動による世界的な危機というより、世界大戦による、人類絶滅の危機を考えて、世界政府をつくる必要があると訴えた。同じようなことをアインシュタインも国連で訴えて、ソビエトの反論を受けている。人類絶滅の回避という次元まで20世紀の人類は追い込まれたのである。しかし、マルクスの時代はそこまで行っていなかった。
by iesukirisuto | 2009-05-15 11:46 | 評論